前回記事では外積の定義と計算方法について基礎から解説しました
今回はその応用編として実際の入試問題(大阪市立大の過去問)での外積の使い方や答案の書き方について説明します
特に正射影ベクトルと組み合わせると四面体の体積が一瞬で求まったりとかなり強力な武器となるのでおすすめです
今回のポイント
今回抑えて欲しいポイントは以下の2つです
- 外積が活用できる場面を知る
- 外積を用いた答案の書き方を知る
- 四面体の体積を一瞬で求める方法を身につける
では説明していきます!
問題での使い方
外積はある平面上に2つのベクトル(ここでは\(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\)と\(\overrightarrow{\mathrm{OB}}\)とします)が存在するとき、その両方に垂直なベクトル\(\overrightarrow{\mathrm{n}}\)を求める際に活用できます
そして\(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\)と\(\overrightarrow{\mathrm{OB}}\)が成分で与えられているとき外積\(\overrightarrow{\mathrm{n}}\)の計算結果は以下のようになります(詳しくは前回記事参照)
これらの定義より外積を活用できるのは以下のような2つのベクトルに垂直なベクトルを求める問題です
通常の解き方では\(\overrightarrow{\mathrm{p}}=(x, y, z)\)とおいて\[\overrightarrow{\mathrm{p}}{\cdot}\overrightarrow{\mathrm{OA}}=0\]
\[\overrightarrow{\mathrm{p}}{\cdot}\overrightarrow{\mathrm{OB}}=0\]
\[{|\overrightarrow{\mathrm{p}}|}^2=(\sqrt{5})^2\]
の3つの式を解くことで\(x,y,z\)を求めます
(黄チャートp418にも類題があります)
これを外積を使って解くと以下のようになります
\(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\)と\(\overrightarrow{\mathrm{OB}}\)の外積\(\overrightarrow{\mathrm{n}}\)を求めた後、大きさが\(\sqrt{7}\)になるように調整し\(\pm\)で向きも考慮することで\(\overrightarrow{\mathrm{p}}\)を求めています
通常の解き方よりかなり早いですよね!
このように2つのベクトルに垂直なベクトルを求めたいときに外積を用いることで計算時間を短縮することが出来ます
答案の書き方
外積は黄チャートでも触れられているものの正確には高校数学の範囲外なので答案に書くのは少しためらわれます
そこでさきほどの問題の回答は以下のように書くのがおすすめです
さきほどとの違いは\(\overrightarrow{\mathrm{n}}=(3, 2, -1)\)を求めるのに外積を利用したことを明記していない点です!
\(\overrightarrow{\mathrm{n}}{\cdot}\overrightarrow{\mathrm{OA}}=0\)と\(\overrightarrow{\mathrm{n}}{\cdot}\overrightarrow{\mathrm{OB}}=0\)を満たす\(\overrightarrow{\mathrm{n}}=(3, 2, -1)\)があたかもはじめに思いついたかのように書くことで外積を使用したことを明記せずに済みます
四面体の体積を一瞬で求める方法
外積は以前解説した正射影ベクトル(詳しくはこちらを参照)と組み合わせることで以下のように四面体の体積を一瞬で求めることが出来ます
上図を解説しましょう
四面体DABCがあったときにDから三角形ABCに降ろした垂足をHとすると、四面体DABCの体積は(三角形ABCの面積)×(高さDH)×1/3で求めることが出来ます
ここで三角形ABCの面積は外積の定義より\(\displaystyle \frac{1}{2}|\overrightarrow{\mathrm{n}}|\)ですよね
そして図をよく見て\(\overrightarrow{\mathrm{DH}}\)が\(\overrightarrow{\mathrm{DA}}\)の\(\overrightarrow{\mathrm{n}}\)への正射影ベクトルであることに気づくと高さは正射影ベクトルの大きさ\(\displaystyle \frac{|\overrightarrow{\mathrm{DA}}{\cdot}\overrightarrow{\mathrm{n}}|}{|\overrightarrow{\mathrm{n}}|}\)で表すことが出来ます
これらを全て代入すると四面体DABCの体積は\(\displaystyle\frac{1}{6}|\overrightarrow{\mathrm{DA}}{\cdot}\overrightarrow{\mathrm{n}}|\)と非常に簡潔に表すことが出来ます!
実際に大阪市立大学2014年の入試問題で使用してみると以下の通りです
本来5分はかかる計算を2行で終わらせることが出来ました!
ただ四面体の体積\(\displaystyle\frac{1}{6}|\overrightarrow{\mathrm{DA}}{\cdot}\overrightarrow{\mathrm{n}}|\)を証明なしで用いるのは少しまずい気もするので検算に利用することをおすすめします(僕自身が受験生の頃もセンター模試で何度か活用しました)